極めてクリアで分かりやすくすることの重要性を学ぶ

Cited from 日経ビジネス

第13回 日本人がグローバル人材になるための方法

マインドは「ドイツ人」の三菱ふそうの日本人社員



極めてクリアで分かりやすくすることの重要性を学ぶ

 特に、仕事上のコミュニケーションにおいて、clear story(明快に話すこと)、transparency(オープンさ・透明性を大切にすること)、fact-base(事実に基づいて議論すること)を徹底することなどである。とにかく極めてクリアで分かりやすくすることの重要性を学んだ。クリアに説明すれば説明された人は同意するだけでなく、やる気を持ってやってくれる。そういうドイツ人たちと付き合っているうちに、江上さんは次第に、自分でもドイツ的にクリアに説明し合う方がやりやすくなってきた(more comfortable)。

 このクリアな説明の重要さを江上さんが最も直接的に学んだのは、江上さんがR&D(研究開発)部門に異動した時だった。江上さんはもともと人事の担当だったが、ある時R&Dに異動し、そこでは開発コストの削減を担当した。その時のドイツ人上司から、非常に多くのことを学んだ。

 その1つが説明のクリアさだった。江上さんは彼から習ったことが身に付いて、自分の部下に対して実行している、という。部下がドイツ人であろうと日本人であろうとその他の国の人であろうと、である。そのせいか、江上さん自身が部下から「江上さんの顔は日本人だけど、マインドはドイツ人だ」と言われるようになったそうだ。

江上さんのような劇的な変化があちこちで起きない理由

 最大の要因は必要性の度合いにある、というのが江上さんの結論だ。江上さんの場合は、日常的な職場に青い人と青い制度・やり方が入ってくるという状況に遭遇した。しかし、典型的な日本企業の場合には、ダイムラーのような外部からのインパクトがない。だから必要性も頭でちょっと考えた必要性にとどまる。
 仮にグローバル化が必要だと頭で分かっても、実際に自ら、プロアクティブにグローバルな環境で仕事をして、英語を含め、これまで日本人同士のみでやっていた仕事の方法やコミュニケーションを切り替えることには迫られない。実際に迫ってくる外国人や外国人のような日本人の存在は不可欠である。
 特に江上さんのように、外国人の下で働くことと、外国人と一緒に働くことと、外国人の上に立つことの3つを合わせて経験する機会が貴重である。それと並んで、そういうことを迫る制度などの環境も必要だろう。Jリーグや日本の野球も素晴らしいが、欧州のサッカーリーグや米国メジャーの環境に入らないと、どこか、必要性において差があるのだろう。
 最後に、江上さんは、こう付け加えた。
 「今は、日本にいるドイツ人の幹部やドイツの本社とのコミュニケーションではグローバル流に行います。他方で、日本側のステークホルダー(利害関係者)や労働組合とは日本人的なマインドをもってコミュニケーションを行います。結局、両方が必要です」と。
 実際、江上さんは、英語で青い人のようにクリアな話をしつつも、話の途中で何度か、「自分の英語はまだまだだし、ここでのやりかたがグローバル流といえるのか確信はない」と謙遜の言葉を織り込むことも忘れなかった。このバランスにも、私は好感を抱き、会話の途中から、このコラムで紹介したいと思い始めていた。

グローバルプロジェクトではいろいろな国や文化の人が参加していますので、Low Contextに合わせることをお勧めいたします。誰がいつまでに具体的に何をするのかということを伝えないと、「このようなことを期待しているのだろうな……」などと気を回してくれないので、おそらく仕事は出来上がってこないでしょう。

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